2018年8月5日、芹沢文子先生メモリアルコンサート
2018年 08月 15日この夏で、私の師匠、芹沢文子先生が旅立たれて3年が経ちます。
思えば本当に素晴らしい人でした。もしかしたら人ではなかったのかも…と思うこともあるほど(笑)。優しげな笑顔を絶やさず、何かにつけて私を勇気付け、励まし、1つの道筋を示して下さった先生。とは言え、理想ばかり吹き込むのではなく、この難しい世の中の歩き方も教えてくださいました。先生から頂いた膨大な教えを私なんぞが要約してみると「どんなことでも(どんな困難や悲劇をも)有難いと思い、その意味をよく考え、感謝すること。」
その先生の教えの集大成と言ってもいいコンサートが8月5日サントリーホールで開催されました。プログラムは先生のご専門のフランス音楽。ドビュッシーのカンタータ「選ばれし乙女」、フォーレの「小ミサ」、そしてフォーレの「レクイエム」です。
2年前、音楽プロデューサーの牧菜さんに、「3回目の夏に、いいホールでオケと女声コーラスのドビュッシーとフォーレをやりたい。そして満員にして、芹沢先生の素晴らしさを再確認して欲しいし、知らない人にも知ってほしい。」と話しました。それが気がついたら現実のものとなっていました。ゆっくり目を閉じて、再び目を開けたらその日になっていたという感じ。牧菜さん、何から何まで、とにかく全部引き受けてくれてどうもありがとう!!!どれだけ大変だったでしょうね。
この素敵なチラシも牧菜さん作。
オーケストラはいつもご一緒して下さる弦の皆さま、管の皆さま、それでも足りない楽器は、彼女たちがお友達を連れてきてくださいました。素晴らしい響きの(当たり前)、本当の音楽!それはそれぞれの皆さまのお人柄から出てくる音楽でした。
楽しくて素敵な人ばかりでした。素人の私に、こうしたら私たちはよく分かるよ、こうすると私たちはこういう風になるよ、駒井さんはこういう音楽にしたいんだね、じゃ、こうしたらいいよ、と諦めずに丁寧に教えて下さいました。初日のオケ合わせでは、ぽろっと「全ての指揮者に言いたい…。」との言葉が(笑)。私は何てラッキーなのでしょう!オケの人の本心を聞いて、直接教えてもらえるなんて、本当の指揮者よりお得で幸せ者じゃないか!本番まで、1ミリでも良くなるように諦めずにがんばるどー!となったのでした。
コーラスはユリノキをまず元にしましたが、それでも20名ほどですから、募集したところ、知り合いの幾つかの合唱団から多くの方が参加を希望して下さいました。総勢62名。ありがたやー。念頭にユリノキを置くと、「ドビュッシーのカンタータはフランス語だよ。」なんてとても言えない!と思ったので、フランス語を消してフランス語に聞こえるカタカナのみを表記。「はい、この曲は日本語だよー!」と言って始めました(笑)。私が恐れるよりも皆様の方がはるかに許容量が広く、フランス語でも全く問題ありませんでしたが!むしろ、余白にフランス語を書き込んでいたという、二度手間付き♡
コーラスは半年かけて練習しました。全てのメンバーに色々な人生があって、練習に来るのもやっとの方もいるはずです。それなのに最初から最後まで、底抜けに明るく、楽しく、良くやって下さいました。自分の頭の中で鳴っているコーラスに近づいた時の感動は忘れません。でも本番は段違いに素晴らしかった。最後の一言、“レクイエム”では涙がこみ上げました。それぞれの思いのこもった素晴らしいコーラスでした。
野田さんのソロは、今までに聞いたことのないピエ・イエズでした。超絶テクニックもさることながら、その歌というか雰囲気というか体全体と周りの空気が、特別な、「祈り」というと簡単だけれども、「祈りに似た何か」だったような気がします。一番近いのは、長いあいだ干ばつに喘いだ人たちが雨乞いのために呼んだ巫女みたいな感じ。見たことはないけれど(笑)。神々しさがありました。
お客様の中に、当時の東京音大の教授陣がいらして下さったのは嬉しいことでした。声楽の先生や音楽学の先生、語学の先生方でした。
コーラスの練習にピアノを弾きにきたり、オケのことで最初から最後まで相談に乗ってくれた岩撫さんが見届けに来てくれたのも嬉しかった!終演後に会場で抱き合った時には涙が出ました。
そしてコンサートの始めにスピーチを下さった姉弟子の五日市田鶴子先生。
感動的で尚且つ面白いスピーチをして下さいました。裏でスタンバイしていたコーラスの方たちが、そのスピーチを聞いて早くも涙していました。
私も発起人として一言、述べさせて頂きました。
出演者総勢92名。関わって下さり当日会場にいらして下さった方を加えると100人を超えます。そしてお客様は念願だった満員御礼。あの日、ホールにいらっしゃった500人近い方の温かいお気持ちで、あの素晴らしいコンサートが出来たことに心から感謝します。
これは全て芹沢先生のおかげなのだと思います。先生は人の繋がりを大切にしました。そして一人一人の心の平安、行くは世界の平和をいつも願い、祈ってらっしゃいました。この善意のコンサートは、多くの人たちが信頼し合って出来たコンサートでした。
どうか世の中に、本質的な平等と、教養と文化が行き渡り、この日の音楽のように、本当の平和が訪れますように。