ゴッホのジャポニスムと小1ゆりこ、美への目覚め
2018年 04月 15日とにかく私はゴッホが好きなのであります。ゴッホへの愛は、フランス留学時代にゴッホの足跡を辿る旅と称して南に北に彼を追いかけ、エッセーを書き、無駄に本にしたくらいです。
この春、菜の花が美しく、またその香りも、「菜の花から油を採る」という小学理科の授業を強く思い起こさせます。菜の花の香りが小学校新学期のドキドキワクワクと結びついているのです。そこで私にとって衝撃の思い出話を一つ。
小1の頃、大好きな担任の武藤先生のお家に遊びに行きました。先生は桶川に住んでいて、先生のおうちから、天井の開く車に乗って飛行場にピクニックへ出かけました。飛行場の土手で、お母さんが作ってくれたお弁当を落としたのも思い出の一つ。落ちたお弁当を指差して、気まずそうにえへへ、と笑っている証拠写真があります(笑)。
その土手にはつくしが顔をのぞかせていたり、おたまじゃくしがまだ孵化しない卵と一緒に水溜りに泳いでいたり、菜の花や色々なお花が咲き誇っていました。
ふと初めて見る美しい景色を見つけ、先生に見せたくて「ほら!」と指差しました。すると先生は「きれいだねー、紫と黄色って合うんだねー!」と言いました。そこには大根の花と菜の花が列になって咲いていました。紫と黄色と緑のハーモニー。
何が何だか分からなかったけれど、初めて見る圧倒的な美しさだった。それを先生は紫と黄色は合うんだね、と言った。という衝撃。
私がきれいと思ったものには、理由があるんだ。美しさってそこの空気と配色と関係あるんだー。紫と黄色は合うんだー。へー。
これが最初の衝撃の思い出。
先生というのは有難いものです。こうして何十年経っても影響を与え続けているのですから。だって先生が「黄色と紫は合うんだね」と言わなければ、何も思い出に残らず、流れてしまったのだから。先生は私の感覚を言語化してくれたのですからー!
そして今日もゴッホの手紙を徒らにペラペラめくっていると、私の好きなくだり、アルルが日本に似ているというところに当たりました。アルルの日差しの強さ、色彩が、ゴッホが憧れた日本に似ている!という大切なくだりです。
散々線を引いたり、付箋をつけているにもかかわらず、気に留めていないところに今日気づき、また感動して震えているのです。それは、ゴッホの見たアルルの風景への描写です。
勝手に抜粋、さらに勝手に編集版(世界文化社「ゴッホを旅する」、みすず書房「ファン・ゴッホの手紙」による)。
「すみれ色のアイリスと、その先に輝く黄金色のキンポウゲの野原。ここにいれば日本の作品(浮世絵のこと)はもう必要ない。というのも僕はここで日本にいるのだ!」
え!!ゴッホがジャパンを感じた美の配色ってすみれ色と黄金色?!
これは私が桶川で見た、菜の花と大根の花の色じゃん!!
ゴッホはこの紫と黄色の花が咲き乱れる景色を「日本の夢」と呼びました。私は6歳の頃、日本に住みながら日本らしい美にふと気がついたんだなと、本を持つ手が震えました。そして先生の一言によって、それが具体的にインプットされたんだな、と。ぶるぶるぶる。
やっぱり外に出なければならないし、旅をしなければならない。そして景色やその色や空気を感じなければならない。自然が作りだすハーモニーを見なければならない、そして人が作った芸術を見なければならない、としみじみと感じたひと時でした。
さ、おでかけしよっと。