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おふらんす文学プロムナード⑭アルバトロス、というと格好イイが。

月に一度、「フランス詩のサロン」という素敵なトコロに行き、ちゃっかりと、そして安易に知識を頂いてきております。そこでは毎回、興味深い詩を読むことになります。

私のような素人は、フランス歌曲に関係のある詩とその周辺を勉強しているのですが、この会では、「詩として面白い詩」を読むことになります。時代や詩人の人生の背景、詩法、そして詩に出てくる語句や慣用句など(フランス語も日本語も!)もいっぺんに教わることのできるお得感満載のサロンです。一応年代に沿って進み、もう1年近く経ちましたので、最近はボードレールさんを読んでいます。

ボードレールと言えば、ダンディズムですが、『悪の華』に入ってから、それが冴えわたっています。神への冒涜さえも大変ダンディーです。ここではご紹介しません(できません)が、「聖ペテロの否認」の最後なんかアッパレです。クリスティアンの方は読むことをお勧めしません。バッハの「マタイ受難曲」でのそのシーンは、エヴァンゲリストが初めて、そして全曲を通してたった一度だけメリスマを用いて、心の昂りを歌うシーンとしても有名です。その後の慰めと許しに満ちたアルトのアリアでは涙を流さずにはいられません。ですが!ボードレールさんの「聖ペテロの否認」、スゴイです。良いも悪いもないですが、とにかくスゴイです。

今日はそんな問題作ではなく、「悪の華」の中で一番有名といっても良い、面白い詩をご紹介。「信天翁」という詩です。もちろん漢字、読めませんでしたけどね(焦)。おきのたゆう、おきのたいふ、あほうどり、と読みます。
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アホウドリは白い大きな翼で素晴らしい飛翔力を持つ雄大な鳥。しかし地上ではその大きな翼が徒となり、ヨチヨチとしか歩けない鳥なのだそう。しかも飛ぶためには十分な助走をしなければ飛び立てないんですって。危険が来たからといってパッと逃げられず、その上、人間への警戒心のない心優しい(かどうかは知らないが)鳥で、いとも簡単に捕まえられることから「アホウドリ」なんて呼ばれてしまっているようです。うふふ。カワイイ。

海の男たちには、釣り針でひっかけて徒に捕獲し、飛んでいる時の格好良さとのギャップ、つまり甲板での不格好さを笑いの種にするという、わる~いお遊びがあるらしい。サロンで聴いた話によると、アホウドリは大変繊細な鳥で、捕まえられるとその恐怖から「オェッ!」となってしまうらしい。きゃわいそう~!
アホウドリを侮辱するような悪い遊びはすぐにやめなさい、水夫たち(笑)!あ、笑っちゃった。
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この「信天翁」という詩は、詩人もまた同じように、詩作や文学、知識と美意識と哲学の森においては英雄であることは間違いないが、世間という甲板に捕まえられたらまるでアホウドリと同じだ、というなかなか皮肉でニヒルな詩となっています。「詩人は選ばれし者」という意識もありますね。ヴェルレーヌはよくつぶやいています(笑)。「選ばれし者の不幸」と。詩人とはそういうものです。

さ、ではアルバトロス、いってみよー!

L'Albatros

— Charles Baudelaire

Souvent, pour s'amuser, les hommes d'équipage
Prennent des albatros, vastes oiseaux des mers,
Qui suivent, indolents compagnons de voyage,
Le navire glissant sur les gouffres amers.

À peine les ont-ils déposés sur les planches,
Que ces rois de l'azur, maladroits et honteux,
Laissent piteusement leurs grandes ailes blanches
Comme des avirons traîner à côté d'eux.

Ce voyageur ailé, comme il est gauche et veule!
Lui, naguère si beau, qu'il est comique et laid!
L'un agace son bec avec un brûle-gueule,
L'autre mime, en boitant, l'infirme qui volait!

Le Poète est semblable au prince des nuées
Qui hante la tempête et se rit de l'archer;
Exilé sur le sol au milieu des huées,
Ses ailes de géant l'empêchent de marcher.

ABABの交韻、6,6の12音節から成り立つアレキサンドランのかなり基本的な詩の形でした。

それでは上田敏さまの名訳でご紹介します。

信天翁

波路遙けき徒然の慰草と船人は、
八重の潮路の海鳥の沖の太夫を生擒りぬ、
楫の枕のよき友よ心閑けき飛鳥かな、
沖津潮騒すべりゆく舷近くむれ集ふ。

たゞ甲板に据ゑぬればげにや笑止の極なる。
この青雲の帝王も、足どりふらゝ、拙くも、
あはれ、眞白き双翼は、たゞ徒らに廣ごりて、
今は身の仇、益も無き二つの櫂と曳きぬらむ。

天飛ぶ鳥も、降りては、やつれ醜き痩姿、
昨日の羽根のたかぶりも、今はた鈍に痛はしく、
煙管に嘴をつゝかれて、心無には嘲けられ、
しどろの足を摸ねされて、飛行の空に憧るゝ。

雲居の君のこのさまよ、世の歌人に似たらずや、
暴風雨を笑ひ、風凌ぎ獵男(さつお)の弓をあざみしも、
地の下界にやらはれて、勢子の叫に煩へば、
太しき双の羽根さへも起居妨ぐ足まとひ。


素敵過ぎて、良く分らなかったかも?
敏さまより分りやすい、鈴木信太郎訳もつけておきますね(笑)。


信天翁

慰みに、船乗りたちは、時折 巨大な
海鳥の 信天翁を 生擒りにする。
航海の これは 呑気な道連れで、しおからい
海を渡って滑って行く船の後から 従(つ)いて来る。

船乗りたちが 甲板にこれを据えると、忽ちに
蒼空の王者も とかく不器用で 恥ずかしそうに、
真白な大きな翼を 櫂のように
その両脇に 憫れにも 曳摺っている。

翼あるこの旅人の なんとぶざまな意気地なさ。
今まで美しかったのに、滑稽極まる醜い姿。
短い烟管(きせる)で 嘴を 一人の水夫は 突っ突くし、
天翔(あまがけ)る身の成れの果の跛(びっこ)を 真似するものもいる。

この雲霄(うんしょう)の王侯に 詩人は似ている。
暴風雨(あらし)の中を往来し 射手を嗤ってはいるが、
地上の嘲罵のただ中に 追放(おいや)られると
巨人の翼は 歩くのを 邪魔するだけだ。


今週のプロパガンダは
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「アホウドリをバカにするなー!」
でいきましょ。

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by komaiyuriko | 2012-02-16 18:41 | 文化・芸術