形見分け
2011年 07月 13日見覚えのないご住所、品名は楽譜となっている、なんじゃらほいと思いながら恐る恐る開けてみると、そこには貴重な楽譜がわんさか入っていました。

同封されていたお手紙を拝読して、一瞬にして涙がこぼれ落ちました。それは私が大学院生だったころの担当教授、滝沢三重子先生の蔵書楽譜だったのです。滝沢先生は私が院を修了し、助手をしていたころにお亡くなりになられました。
滝沢先生といえば思い出される爆笑シーンは数限りありません。例えば…
1.ホームレッスンで飲み物を出してくださるのですが、カップに残った紅茶やコーヒーを突然窓を開けて庭に捨て、「最近窓際の植物が枯れて困る」と言ってみたり、
2.ホームレッスンお付きのピアニストの先生が「お手洗いを借りたい」と言うと「行けるもんなら行ってみな」と言い放ち(廊下が散らかっているので辿り着けなかろうという意)、ピアニストの先生は近所の公園のトイレへ行かされたという話だったり、
3.大学のレッスンに朝少し遅れて到着された先生、レッスン室前に並んで待つ学生の列を見ながら一言、「あ~ギリギリ間に合った~」(全然間に合ってない)だったり。
先生の豪快で愛情溢れるお人柄はお葬式の席でも炸裂。先生の思い出を語る人、語る人、会場の爆笑を欲しいままにしていました。先生を失ったことへの悲しみの涙と笑い涙で、列席者はみんな濡れていました。
そんな先生の13回忌を終え、この度、門下の諸先輩方が楽譜を形見分けし、お弟子さんたちに郵送作業をして下さったのでした。膨大な量の楽譜だったと思います。この大変なお仕事をされた諸先輩方には心から感謝申し上げます。
この度頂いた楽譜の中には相当マニアックなもの(ベッツ等)が揃っていました。また、アンサンブルの楽譜も数多くあり、ちょうど探していたフォレやサン=サーンスのデュオ譜や、フランスの多声音楽の楽譜もありました。もちろんオペラ譜も。
楽譜には先生の書き込みもありました。訳詩や注意事項、フレージング、ブレス記号などがとても有り難く、その線を手でなぞってみました。先生のお顔と甲高い声が思い出されて泣きたくなりましたが、やっぱり面白逸話の方が寂しさより上位に来て、クスクスと笑ってしまうのでした。
本当に素晴らしい先生でした。とんでもなく厳しくて、それでいてその厳しさ以上の愛情があって、その上最高に愉快で豪快でユニークな先生でした。
なんとか先生に近づきたいものです。
これからは私も躊躇いなく庭にお茶捨てよっと(笑)。
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