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カルミナ・ブラーナ

まーちゃんの日記にある通り、カルミナ・ブラーナ、良かったですよー。どーも、ユリです。

私はオペラシンガーズとしてコーラスで参加しておりました。さすがソリスト集団のシンガーズです。我等のコーラスマスターとしてイタリアからわざわざいらして下さったミラノ・スカラ座のコーラスマスター、ガッビアーニさんも「頭の中をソリストではなくコーラスに切り替えてくれ!」と嘆願の連続でした。ですよねー(笑)。何を歌うにもそれぞれの曲や演奏形態のスタイルがありますから、それに則らねばなりません。でも彼の真摯な態度と不屈の精神で幸い、良いコーラスになれたのではないでしょうか。

指揮は泣く子も黙るR.ムーティ。凄まじい緊張感を提供してくださいました。恐ろしいっつーの!俯き加減で眼鏡の上からレンズを通さずに直に鋭い眼光をもって睨まれたら空気も凍りつきます。でもコーラスには愉快で優しかったけどね(笑)。自分がオケのソロ楽器だったら、多分恐怖で泣きながら走って逃げ出していたと思います。そんな緊張感です。ご理解いただけますでしょうか(笑)。

カルミナ・ブラーナとは、11世紀から13世紀、ドイツの鬱屈とした希望の見出だせない日々の中、修道僧や学生たちが書いた詩歌集のことです。ドイツのバイエルン地方にあるボイレン修道院で見つかりました。その内容は大変世俗的で衝撃的であるにも関わらず、とても哲学的なものでした。現代に生きる私がそれを読んでも、とても新鮮に輝きを持ってそれらの言葉が響きます。例えば・・・

『運命の女神』の章
運命の女神よ、お前は月のように満ち欠けし常に定まらない。
人生も同じこと、確かなものは何もなく、運命に弄ばれ無に帰する。
恐るべき運命よ、おまえは車輪の如く回ってゆく。我らは常に憂いながら、たえず恐れおののく。

『春に』の章
小間物屋さん、私に頬紅をくださいな。美しくなって彼をものにしなくっちゃ。
さあ、私を見て!そして私を好きになってね。

『居酒屋で』の章
居酒屋にいる時は賭事に興じるのさ。ここじゃ身分の差なく賭け飲みし、死すら恐れやしない。
死ぬほど飲んで皆から蔑まれるし貧乏になるし、でも俺達はつるんで正しき者どもに対抗するぞ!

『愛の宮廷』の章
早く来て!私を待たせて死なせないで!

もしも若者と若い娘が一緒に小部屋に居たならば、 それはもう幸せな繁栄ある結びつき。
倦怠は遠ざかり、体で、腕で、唇で遊戯をする。

季節はまさに悦楽の時。乙女も若者も、一緒に悦ぼう!

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オルフの素晴らしいところは、プロローグの「運命の女神」をエピローグにもそのまま持ってきたところでしょうか。どんなに人間があがいたところで、結局は運命の輪廻から逃れることはできない、ということを教えてくれます。だからこそ人は暗く酷い人生を忘れるために酒を飲む、忘れるために愛し合う、しかしそこで得た春でさえ、運命によって操られていて私たちにはどうすることもできないのです、という趣旨でございましょう。

長い長い稽古中、カミュの不条理への抵抗を思いだしました。普遍的な思想ではある、「運命には逆らえず我等は弄ばれている論」ですが、それに挑んでいく男、ムルソーを考えずにはいられませんでした。そののち、宮沢賢治の「春と修羅」を思い出し、具体的に思い出せば思い出すほど涙が流れるのを堪えなければならない時もありました。

そして自分を省みるのです。まったく一時的に絶望的な気分にならざるをえない音楽です!かといって人生を投げ出すわけにはいきません。そして思い至るのは、厳しく暗澹たる日常の中に小さな幸せがあるのかもしれない、ということです。もしかしたらそんな平凡で代わり映えのしない、時には腹立たしいようなものこそが本当の人間の幸せの正体かも知れません。

作曲家のカール・オルフはドイツの作曲家で、ストラヴィンスキーの弟子でもありました。原始主義を思わせるような激しいリズムと驚きの和声を使用しています。コーラスも打楽器的に使われているところが多々あります。また印象派、特にドビュッシーを思わせるような和声も響きます。さらにグレゴリアンチャントやこれ以上ないようなピュアな和声、旋律線を使用した曲も。最初から最後まで1小節も退屈なところのないスゴイ曲です。アドレナリン出まくりです。私はメシアンの曲を聞くと共感覚がマックスに働きますが、カルミナでも大忙しにその機能が働いていました。

良い音楽は多くのこと私たちに考えさせます。それによって逆に具合が悪くなることもあるでしょう。でもそれに立ち向かって歩んでいく精神的にタフなアタシでいたいと思いました(笑)。
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上野の桜の下で物を思う。
6時間の空き時間を利用して(嫌味)。
by komaiyuriko | 2010-04-15 23:43 | 文化・芸術