シャネル&ストラヴィンスキー

こんにちは、ユリです。
突然ですが皆さん、観た方がいいですよ、こちらの映画を。
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シャネル&ストラヴィンスキー
シャネルはきっと知らない人はいないでしょうね。でももしかしたら、ストラヴィンスキーのことは知らない、とおっしゃる方もいるかもしれません。

ストラヴィンスキーとは、20世紀のロシア人作曲家です。私の好きな作曲家ベスト10にはかなり上位で入ってきます。私にとってストラヴィンスキーは忘れられない出会いのある作曲家です。

あれは高校3年生の時~。
声楽科である私は、さすがにストラヴィンスキーの曲を歌うことはその頃ありませんでした。ですから、彼についてはお恥ずかしながら名前とバレエ音楽の代表作名くらいしか知らなかったのです。ある日、音楽史の授業でついにストラヴィンスキーと接することになりました。

それにしても3年生の音楽史の授業は楽しかったな~。あ、3年生に限らず、高校時代は最高に楽しい日々でした。日曜日がどうか来ませんように!といつも願っていて、一番つらいのは夏休みでした。早く学校に行かせてくれー!!といった禁断症状が表れたものです。授業も先生もすべてが興味深く、友人もさすがに音楽家ですから面白おかしな人ばかり。あの3年間は私の宝物です。

さて、その3年生の音楽史の授業の教材は「印象派以降」という分厚い辞書のような本でした。
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先生は私の大好きだった担任の作曲家先生。カンちゃんという愛称で生徒から愛されていました。寛大でユーモアのある素敵な先生。だから授業中も生徒は自由に感じたことを好き勝手発言します(笑)。

その日は「原始主義」に突入した日でした。「原始主義」とは、このストラヴィンスキーによって始まったといっても過言ではありません。特徴は強烈なリズム感、複調(普通の曲は例えばハ長調のように1つの調で作曲されています。もちろん転調はありますが、ハ長調を演奏している間はハ長調という1つの調が原則。それが同じ時間内に複数の調が同時に現れていることを複調と言います。)、大規模なオーケストラ編成と大胆なオーケストレーションです。この「原始主義」を代表するストラヴィンスキーの作品は、バレエ音楽の『春の祭典』『火の鳥』『ペトルーシュカ』です。でも何と言っても『春の祭典』でしょうねー。

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授業も『春の祭典』がテーマに挙げられました。オーケストラの楽譜が配られ、音源がかけられます。音楽史の授業は、高校1年生をスタートに、古いものから順番に勉強していきます。当然最初はグレゴリオ聖歌。ネウマ譜といってグレゴリオ聖歌時代の楽譜の読み方なども習いました。そしてどんどん時代が新しくなり、3年生で20世紀へと進みます。ということは、私たちも時代時代を通って、その時代の鑑賞者と同じように新しい音楽を体験し、勉強することになるのです。

『春の祭典』が楽譜とともに私たちに提供された時、クラスはまるで動物園のように乱れました。ストラヴィンスキーが新しすぎたのです。音楽が強烈すぎたのです。「こんなのは音楽じゃない!」と否定する人も多かったように記憶しています。何しろ先生が自由人だから生徒も自由人。思ったことは授業中みんなベラベラ発表します(笑)。その後、インパクトのあるリズムの部分をみんなでリズム打ち(楽譜を見ながら手で机をたたく)してみよう、ということになり、クラスはますます荒れたことを思い出します。

私はすごく興奮しながら、とても興味を持ったことを覚えています。何か凄いことが起こったな、という衝撃の出会いでした。

前置きが長くなりましたが(笑)、その衝撃のストラヴィンスキー『春の祭典』がパリのシャンゼリゼ劇場で初演された時の模様から、この映画は始まります。音楽とバレエの圧倒的なシーン、そして会場の、まるで高校3年生の音楽史の授業を想起させる混乱。すさまじいオープニングです。

私は初演のニジンスキーの振付も素晴らしかったし、音楽もその時点ですでに良かったのだと思います。現代人だからそう思うのかな。でもとにかく大失敗に終わったこの『春の祭典』が、改訂され再演を迎え成功を収めるまでのシャネルとストラヴィンスキー2人の間に起こる、才能と愛と苦悩と芸術と創造の物語です。

シャネルと言えば私を失笑させる名言集の持ち主。
「香りをまとわない女性に未来はない」
納得するけど、その言い草、どう?!って感じです。もう一つ爆笑した名言があったのですが、今ど忘れ。そして今回の映画でも名言を吐き捨てていましたよ。セリフでしょうけど、本当にシャネルが言っていそうで苦笑の名言。
「2人の女に値しない男ね。」
かっけ~、シャネル。ストラヴィンスキーもタジタジです。

シャネルってスゴイ!の一言でございます。シャネルにひれ伏したくなるような映画です。
映像も美しく、パリもやっぱり素敵。シャネルの別荘でのシーンも多いのですが、ガルシュといってパリ人の憧れの地。あの時代のパリの文化や社会、そして芸術家たちの芸術家としてではない、一人の人間としての部分を垣間見たような気がしました。でも人間、すべての要素があってのアイデンティティですからね~。

最後に私のオススメ“ストラヴィンスキー”を3つ、ご紹介。
ダントツ1位・・・『春の祭典』
ダントツ1位タイ・・・オペラ『放蕩者のなりゆき』
ダントツ2位・・・『ペトルーシュカ』、です。

バレエ音楽の2つはCDが山のように出ています。鑑賞の機会もあると思います。是非。オペラ『放蕩者のなりゆき』は、「原始主義」の次に彼が到達する「新古典主義」の代表作です。音楽に一音たりとも怠惰なところのない傑作です。このオペラは、音楽だけをCDで聴いていても完璧~!とうならずにはいられません。でも演出家にとってはきっと相当やりがいのある作品でしょうから、できるだけ多くの舞台を観たら面白いと思います。日本では残念ながら上演の機会が少ないでしょうけどね~。
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ベルギー王立モネ劇場、大野和士指揮のDVDが発売されています。私がパリにいた頃、ブリュッセルまで観に行ったものです。最高でした。演出は鬼才ルパージュ。オススメです。オペラの最後、主人公アンがもはや常人ではなくなっている、かつての恋人トムを子供のように抱いて子守唄を歌うシーンがあります。感動的で静かなシーンです。充足の時間です。このシーンを見ると、私が死ぬ時、同じようにしてほしいと願わずにはいられません。
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by komaiyuriko | 2010-01-23 18:01 | 文化・芸術