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昨日は雪が降り、そのことが嬉しくて、足元に積もった雪を踏んでは心が温まった夜でした。

お雛祭りのその日に、私が以前から自分のためにやらなければならない上に心底憧れていたフォレ&ヴェルレーヌの『優しき歌』(全曲)を歌うコンサートがあります。そこではもう一つ、ドビュッシーの『マラルメの3つの詩』(全曲)も歌います。私の愛するラヴェルにも同じく『マラルメの3つの詩』があるのですが、そのうち2つの詩はドビュッシーと共通です。ラヴェルの作品の方は以前コンサートで歌わせて頂いたこともあります。学生時代から熱烈に恋した曲でもありました。それなのに私のフランスの師匠、マダム・セリグったらこの曲にあまり興味がない感じ。きっとそれはドビュッシーと比べてしまうからだと勝手に推察しています。
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ちなみにフランス歌曲には同じ詩に何人もの作曲家が曲をつけ、どれも名曲となっているものがたくさんあります。それだけその詩には、作曲家のインスピレーションを喚起させる凄みや美しさというものがあるのだと思います。ヴェルレーヌの「グリーン」、「月の光」、「マンドリン」、「牢獄」、「巷に雨が降るごとく」、「そはやるせなき恍惚の」、ボードレールの「旅への誘い」、レニエの「雨に濡れる庭」、「秋の夜」などなど。パッと思い浮かんでもこれだけあります。まだまだ沢山あるでしょうね、ゴーティエ、ユゴー等。

例えばフォレとドビュッシーがかぶっている詩というのはたくさんあります。どちらの作品も良くてこんなに感じ方が違うのに「どちらも素晴らしくて選べない!(別に選ぶ必要はないんだけどね。)」なんて、苦悶の声を上げることもしばしば。

それがこの「マラルメの3つの詩」に関しては、ドビュッシーに決まりだね、的なご意見ばかり小耳に挟むではないですか!私の心は大変痛みました。O triste,triste mon âmeですよ。(全然関係ないけどヴェルレーヌより)

この場合では、すでに在る優れた詩が、ドビュッシーさんという魂(媒体)とラヴェルさんという魂(媒体)を通り抜けて曲となって出てきたわけです。当然、全く違う作品が出来上がりますよね。あとは趣味の問題です。自分の趣味に合った方が好きだし、また逆にもう一方の解釈の違いに驚いて感嘆し、そちらに心を寄せてみたり(笑)。ですからドビュッシーの方がいいという単一的な見解ばかり聞かれると、ラヴェル命のタトゥーを心に刻んでいる私にはちょっと不服なのであります。

「グリーン」なんかですと、若い頃の私はフォレの方が好き。早朝の全てが生まれ変わったフレッシュさと、若者の純粋な恋心が持つフレッシュさが相俟って最高だと思っていました。でもドビュッシーの方が官能的で好きになり、今では本当にどちらかなんて選べない究極の2曲です。「そはやるせなき恍惚の」はドビュッシーの方が断然好き。「マンドリン」は100%フォレ。アーンはあんまり~。デュポンのもなかなか素敵で私は好きですねー。こんな感じで自分が詩を読んだ時の感覚に合った曲の方が好きとなります。

なのにラヴェルの「マラルメ」には称賛の声があんまり聞こえないじゃないの!!
私は100対0でラヴェルです。ラヴェル最高。100万点です。譜読み中の私はドビュッシーの「マラルメ」をさらいながら「ドビュッシーったら一体どういうつもり?!」と、心の中で軽く30回は言いました。譜読みが難しすぎて「ドビュッシー、あったまきた!」と悪口を言ったりもしました。

今日、ピアニストさんとの合わせでドビュッシーの「マラルメ」が大分体に入りました。
「あれ、なんかいいな。。。」
と最近図らずも感じている私でしたが、今日はっきりと、
「これはヤバイ、素晴らしい。」
と気付きました。

特に2曲目のラヴェルと共通の詩、「空しい願い」に関しては、以前マダム・セリグが言っていた「この曲はFête galanteだから。」の意味がピカーーーンと分りました。

それを言われた時はラヴェルの「マラルメ」のレッスン中でした。私の反応は「ふ~ん」という程度。よくよく考えても、「ふ~ん、そうなんだ」でした。それが今日、さっきですよ、さっき。「Fête galanteってこういうことか!!」とまさに頭の中で電球が点灯しました。

すると曲が余りにもクリアに見えて、色合い豊かに洒落豊かに感じられ、歌い方も180度反対側となりました。Fête galanteを全身で感じつつ歌うと今までとは全く別の曲になるではありませんか!うん、もう確実に別の曲です。

難解な曲を勉強していて、「分かった!」と思った時、やっと目が見え始めます。混沌とした暗闇に一筋の光が射す感じ。その「分かった!」を得てからがスタートです。さっき、ようやくこの「分かった!」を迎えました。おめでとう。ありがとう。

結論ですが、ラヴェルの「空しい願い」は素晴らしいということ。結局ね。そちらにはもっともっと得体の知れないイマジネーションと不気味さ、セピア色の美しい風景とねじれた思惑や恋心や嫉妬心、そして純粋さがあります。中世などの古い時代のきな臭さを感じます。そしてドビュッシーの方は完全にFête galanteで彩られていて、これまた素晴らしい作品であるということ!ユーモアといったら言い過ぎかもしれませんが、ラヴェルのような深刻さはないと見ました。もっと美しさや優雅さに長けていてその上澄みのような感じ。中世っぽい雰囲気はリズムや音階、和声でガンガンに醸し出してはいるものの、とても現代的(ちょっと言葉が見つからない)、プルースト的(これ正解)な感じがしました。
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(画像が悪いですが、左がドビュッシーで右がラヴェル)

ごめんね、ドビュッシー。悪口言ったりして。
「ドビュッシーの音程のせいで歯が痛い(怒)。」なんてもう言わないね。

この勝負、引き分け。

あ~、楽しかった。この楽しさ、この熱の出るような法悦。
「これがフランス歌曲の醍醐味じゃーーーーー!!」という気持ちで、雪の凍結した道を、熱を発散させながら自転車をぶっとばす私なのでありました。

最後に私の「一人相撲日記」を読んで下さった方へ、感謝の気持ちを込めてマラルメの「空しい願い」をプレゼントします。


無益な願い(加藤美雄訳)

王女よ、あなたの唇が触れて、この茶碗に
うかび出るヘベーの運命に嫉妬した私は、
情炎に燃えながらも、聖職者の慎むべき身ゆめに
セーヴル焼に裸身をあらわさないのです。

私は、あなたの髭を生やしたむく犬ではないのですし
香料入りのボンボン、口紅、しゃれた将棋の駒でもないが、
私の上に注がれたあなたの閉じた伏眼をしっている。
金髪の神業のような編み手こそ、金銀細工の名手です。

わたしたちを名づけて下さい……木苺の香に豊かな微笑が
見さかいもなく誓いを喰み、妄想に鳴く
手馴れた仔羊の群と一体となる、あなた。

わたしたちを名づけて下さい……扇の翼持つ愛神(アムール)が
笛を手に、この羊小屋を眠らせる私を描くために。
王女よ、あなたの微笑みの番人と、わたしたちを呼んで下さい。


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by komaiyuriko | 2012-01-25 02:23 | 文化・芸術

バッハの四季

小雪の舞い散る季節となりました。

先日、紀尾井ホールで《バッハの四季》と題されたコンサートがありました。コーラスは25周年記念を迎えられる国分寺チェンバークワイア、オーケストラは古楽器オーケストラとして有名なシンポシオン、そして指揮は市瀬寿子先生でした。

私はバッハのカンタータとマニフィカトを担当。今回の曲はアクロバティックな曲が多く、譜読みを始めた頃、「これは無理だって~、セバスチャン、器楽じゃないんだから~(苦笑)。」と内心思いましたが、その難しさが楽しくなり、譜読みを始めて三日後には、これらの曲の虜になっていました。難しい程なんでも楽しいですよね〜。

今回の合唱団にはナント私の伯父が団員として参加しています!
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(2列目の右から4人目が伯父さん)
実は2年前に、伯父さんとは第九で共演済み(笑)。今回で二度目となります。前回もそうでしたが、コーラスに伯父さんがいると思うと嬉しくて、後ろ(コーラス席)を振り向きたくなってしまいます。まさに授業参観。それも伯父さんが歌っているところを見たいという欲求と、自分が歌い終わって椅子に座る時に「ね、今見ててくれた?聞いててくれた?」という、嬉嬉とした気持ちの二大浮つき衝動に駆られます。あ、でも本番だけは集中しましたよ!

また、この度のオケには、以前ブクステフーデの『我らがイエスの四肢』でご一緒させて頂いたコントラバスのダンディ兄さんNがいらっしゃいました。最初のオケ合わせで彼を見つけた時の喜びといったら!

私がその喜びを友人に語ると、私と夜な夜な室内楽なぞをして一緒に遊んでくれる弦楽器のお友達たちがよく知る人物なんだそうな。ダンディ兄さんは、お友達が団員であるオケのトレーナーなのだそう。嬉しい喜びでした。

もう一つの喜びは、このコンサートで素晴らしい司会をして、少し固めなコンサートの雰囲気を和やかなものにしてくださった元NHKのアナウンサー、村松真貴子さんとの共演でした。私にとっては『イブニングネットワーク』や『いっと6けん』で毎日テレビで拝見していた方。しかし彼女は、私の父とジャーナリスト仲間なのです。私のCD などもお持ちで、さらに私の自堕落な生活もご存知のよう(汗)。恥ずかしいやら、嬉しいやらのご対面でした。村松さんの司会は、笑いと唸り(切り返しや切り盛りの凄さ)の連続で、やっぱりプロというのはすごいなと思い知らされました。

そんなこんなで大変楽しい稽古の日々と本番を終えました。
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師匠の芹沢先生、司会の村松さん、伯父さん、そして私の双子ちゃん(母)。
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親戚一同。

このコンサートには伯父さんの幼稚園からの友達、そして大学時代のご友人が多く聴きにいらっしゃいました。その後一同に集まって新年会を赤坂の『魚丸』というお店で開催しました。
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赤坂の魚丸にて。実は私のいとこのお店なのです。厳選された日本酒の数々と繊細で超美味なお料理がたまりません。赤坂にお出かけの際には是非(というより、わざわざ魚丸目がけてお出かけになって間違いありません!)。

私は幸せ者だなとつくづく思います。この時代にキリギリスのように浮世離れして歌なんか歌って暮らしているんだから!勿論、芸術のために生命を削っているとは思いますが、そもそもアートのない場所には生きていけません。それでも色々な環境や状況によって、同じような人間でさえ、芸術と共に生きて行くことは大変難しいことだと思います。私の周りで常に支えてくれる家族、親戚、友達といった全ての人が私の音楽を応援してくれる、こんなに幸せなことってあるでしょうか。

きっと私の前世が立派な人だったんだね(笑)。

自分の有難い境遇を存分に感じつつ、より一層の努力で人生を芸術と共に彩って行きたいと思います。

そんなわけで早速、今週末には山形で地元高校生たちとオペラをしてきまーす!
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楽しみ、楽しみ!

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by komaiyuriko | 2012-01-23 23:01 | コンサート

失われた時を求めて

先日、新春コンサートという一日に二回公演のコンサートがありました。私は第9ハイライト(!)と司会という変わったスタイルで参加致しました。そのコンサートでは“早春賦”もプログラムにあり、その時に「平成も二十何年になってくると、日本語に通訳が要る時代となりました(汗)。」と曲紹介を始めました。文語体の持つ格調と美しさは失いたくありませんね、現代人には難しいけれども!

そんな失われつつある美しい歌を素晴らしい室内楽と共に歌うコンサートシリーズ第二弾、『庭の千草も草の音も』がサントリーホールで行なわれました。去年の話になりますが(笑)。新春思い出し日記ね、コレ。
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今年は「庭の千草」「鉄道唱歌」「我は海の子」等の唱歌が一部、二部は童謡の「からすの赤ちゃん」「蛙の笛」「浜千鳥」等を歌いました。
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相変わらずため息のでるような音楽をして下さる室内楽の皆様、そして音楽家の感性を呼び覚ます編曲をなさる加藤先生の音楽によって、一曲一曲楽しく、もったいないような気持ちで演奏致しました。
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会場いっぱいのお客様も驚きの美声を聞かせ(このコンサートは会場の皆様と一緒に歌うコーナーが思いのほかあります!)、最後は感動の嵐、スタンディングオベーションとなりました。ま、ある仕掛けによるものなんだけどね(笑)。

このコンサートシリーズは、私にとっても大切なライフワークとなりそうです。音楽には、その曲を聞いたり、口ずさんだりした時代を思い出し、自分の人生を省みる時間を生む効果があります。当時、気づかなかった大切なものを今新たに発見し、懐かしんだり、感謝したり、失われたことに涙を流したり、そのような時間って必要だなと思います。音楽の大切な作用である、時間旅行とそれに追随する思考の時間を私も大切にしていきたいと思います。

今年の12月に、もうすでに第三弾が決まっています!
12月9日(日)14時開演
《歌を忘れたカナリア》

会場は同じくサントリーホールです。

ちなみに第1回の『更けゆく秋の夜』は、CDとなってご家庭で聴くことが出来ます!ご家族へのプレゼントにも最適です。詳しくはコチラまで。購入できます。

マドレーヌもいいですが、童謡や唱歌によって、《失われた時を求めて》みてはいかがでしょうか?

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by komaiyuriko | 2012-01-17 00:15 | コンサート

今年の抱負を少々。

明けましておめでとうございます。今年は、一日一日を大切に生きていきたいと思います。何が起こるか分からない世の中ですからね。悔いのないように人生を謳歌したいと思います。

大晦日の日、なんだか熱っぽく、お腹も痛くなってきました。得意の腸炎かしら、食中毒かしら、と思って、二三日のうちで食べたものを思い起こしてみました。するとどうでしょう(笑)。何もかもが思い当たります。翌日の元旦は、私としたことが何も食べられず、一日中寝込んでいました。今年の目標は「変なものは食べない&腹八分目」に決まりです。

さて今年、新年最初のコンサートは、モーツァルトのミサ曲でした。クレド・ミサといって30分程度の曲です。ソリストパートはなかなかやり甲斐があって、アンサンブルもかなりあります。今回のソリストは、アルトがクルトパのさーちゃん、テノールは渡辺公威さん、バスは小野和彦さんでした。声質も合い、一度の稽古でアンサンブルを察知して必要なことをしてくださる素晴らしいソリストの方々でした。こうなるとアンサンブルするのが楽しくなっちゃいますよねー!
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コーラスは、私がヴォイストレーニングでお世話になっております、響友会合唱団です。
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ハイレベルなコーラス団で、以前、サントリーホールでラヴェルのオペラ『子供と魔法』を上演したときにコーラスで出演していただいたこともある合唱団です。今回もクレド・ミサ以外に、様々なジャンルの歌をちょっとした演出と共に繰り広げ、楽しいコンサートとなりました。
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終演後、“遊び仲間の音楽会”シリーズでいつもご一緒している、響友会の音楽委員長こと稲垣さん、さとこさん、河野さん、マキナさん、そして母とご近所の辻さんと共にパチリ。

最近は、今週末に紀尾井ホールで行われる『バッハの四季』というコンサートのオケ合わせで楽しく過ごしています。カンタータやマニフィカトのアリアやアンサンブルを歌いますが、これがまたアクロバティックな曲揃い!譜読み中は、難しくて焦りの半笑いが止まりませんでしたが、今ではその難しさが楽しくて仕方ありません。
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是非、聴きにいらして下さいまし。バッハの数学的というか建築的というのか、とにかくきちんとハマると最高に気持ちの良い音楽がお聞き頂けると思います。オケは古楽器オーケストラのシンポシオン、コーラスは国分寺チェンバークワイア、指揮は市瀬寿子先生。コンサート当日は、音楽解説やNHKアナウンサーさんの司会も入るようです。知識を得る喜びもある素晴らしいコンサートになること請け合いです。

それでは皆様、14日に紀尾井ホールでお会いしませう。

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by KOMAIYURIKO | 2012-01-12 14:16 | コンサート