カテゴリ:文化・芸術( 27 )

神奈川近代文学館で行われている、『中原中也の手紙』というエキスポジションに行って参りました。
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日本の詩人では中原中也が断トツ好きです。好き過ぎて、小林秀雄が嫌いになったくらい。

中也の直筆の手紙が102通も展示されているというので、猛ダッシュで行く事にしました。
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(近づいてくる興奮をお裾分け)

中也の好きな詩は、「月夜の浜辺」、「サーカス」、「一つのメルヘン」、「春日狂想」、「汚れっちまった悲しみに」、「心象」、「少年時」、「また来ん春…」、「帰郷」、「閑寂」、「夏の日の歌」、「秋の一日」、「いのちの声」、「冬の夜」等々、挙げればキリがない。本当にキリがない。それほど、私には大切な詩人です。

今は大暑。せっかくですので、中也の、昔日の夏の日を歌った詩をご紹介。

少年時

黝(あをぐろ)い石に夏の日が照りつけ、
庭の地面が、朱色に睡つてゐた。

地平の果に蒸気が立つて、
世の亡ぶ、兆(きざし)のやうだつた。

麦田には風が低く打ち、
おぼろで、灰色だつた。
 
翔(と)びゆく雲の落とす影のやうに、
田の面(も)を過ぎる、昔の巨人の姿――

夏の日の午(ひる)過ぎ時刻
誰彼の午睡(ひるね)するとき、
私は野原を走つて行つた……

私は希望を唇に噛みつぶして
私はギロギロする目で諦めてゐた……
噫(ああ)、生きてゐた、私は生きてゐた!


中也展に話は戻りますが、その時代時代に、中也が見て刺激を受けたもの、感じたこと、希望、愛、焦り、失望、絶望といった彼の生の告白が綴られています。手紙の宛先は安原喜弘。中也の文学友達です。彼は中也の激しい気質をいつも慰めるような優しい存在だったのだと感じました。中也は彼の存在を頼りにしていたようにさえ思えます。こういう人が中也のそばにずっといてくれたことを、中也の家族でもない私ではありますが、彼に感謝申し上げます(笑)。

彼の字は、彼のお人柄を伺わせる、丁寧で優しく美しい字です。実はワタクシ、字フェチなのです。字で、人柄を判断する危ない思想の持ち主。中也の字は昔から大好きでした。私の愛読書、「新潮日本文学アルバム」の中也の巻に、小学生の頃に書いた習字などたくさんの直筆の写真が収録されています。その時からなぞっていたくらい好きな字です。

中也はまことに中也らしい字です。この文学館は、常設展も字フェチにはたまらない、大変興味深い代物でいっぱいです。日本の文豪の直筆がずら〜っと並んでいます。三島は、美しすぎる女字だなぁ、フン、とか、大好きな太宰は、意外にもバランスが悪いなぁなど、思うところがたくさんあるのです。

絶対オススメのエクスポジションです。8月4日までです。
一言アドバイス。思ったより、拝観には時間がかかります。余裕を持ってお出かけくださいな。さもないと、閉館時間に追い立てられるように見る事になりますから。私のように(泣)。

近代文学館の目の前には綺麗で小さな広場があります。何て素敵な空間でしょう。忘れかけていたパリのJardin des plantes(植物園)を思い起こさせます。
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ベンチに座って本でも読みたい衝動に駆られます。

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シロツメクサよ、何と少女時代を想い起させることか!
噫(ああ)、生きてゐた、私は生きてゐた!

広場を抜けると展望台。
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そして隣にはバラ園が!これはまるでバガテル公園のよう。
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アルブレヒト・デューラーというバラ。同じ茎から違う色のバラが!流石デューラー。

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フランスのラヴェンダー

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普通のラヴェンダー(笑)。

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紫陽花の美しい季節でした。

そして当然、夕食は中華街。もちろん食べ放題。
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一緒に行った友人は、食事中に席を立ち、しばらくすると、衣装替えをして再登場しました。なんと、食べ放題に備えて、お腹の締め付けの少ないワンピースを持ってきたのだそう!天晴れ!


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by komaiyuriko | 2013-07-24 01:13 | 文化・芸術

先日、私にとって大変光栄なコンサートが開催されました。フランスの作曲家ジャン・クラの作品をメインに扱い、関わりのある作品と共にプログラミングされた素晴らしいコンサートです。しかも演奏者がスゴイのです。私の大尊敬するピアニストの鶴園紫磯子先生、パリのコンセルヴァトワールの教授陣、チェロのフィリップ・ミュレール氏、ピアノのジャック・ゴーティエ氏、ヴァイオリンの七島晶子氏、錚々たるこのメンバーでのコンサートに、私なんぞが共演の機会を得たのでありました。
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私はクラの師匠であったデュパルクの歌曲、ボードレールの詩による二曲を歌わせて頂きました。
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言わずと知れた世界の名曲「旅への誘い」と「前世」です。やっぱりボードレール、かっこいい。ボードレールの言葉には強さがあるので、彼の詩を口にするだけで、自分が高まったような気さえします。精神的な高貴さがあるというか、孤高な幻想家というか、やっぱりダンディズムだね~。

アンサンブルの楽しさ、音楽作りの喜びを再確認させられたコンサートとなりました。ドビュッシーのチェロソナタは私の大好きな曲。今回は物凄くアグレッシブな演奏で、こんなドビュッシー聴いたことない!という、大興奮を覚えました。ゴーティエさんと七島さんのクラの小品も大変感動的でした。愛情のこもった優しい対話のような演奏でした。

今月はフランス歌曲づいています!明後日はナント!
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フォーレの「優しき歌」全曲だよ!しーかーも、室内楽伴奏版。これはみんな、オニヴァだよ。

いつもご一緒させて頂いているヴァイオリニストの池澤氏率いるピアノカルテットのコンサート。

ショーソンの「終わりなき歌」の弦楽版も歌います。オープニングはショーソン。失恋による大絶望ソングに始まり、フォーレの、恋の始まりの高揚感、不安、希望、そして愛の成就を歌います。なかなか演奏されない(なぜなら単純に難しいから!)コンサートですが、字幕をつけて上演致します。今やっと訳詩が終わったところ!るん♪

3月29日(金)19時開演
杉並公会堂小ホール、3000円です。当日は3500円なので前日までにご連絡くだないな。

フォーレの『優しき歌』は全9曲で、その第8曲目が「ねぇ、そうでしょう?」という曲。泣くのを堪えるソング№1です。こんなに優しい歌があるでしょうか。拙訳にてご紹介。

ねぇ、そうでしょう?
P.ヴェルレーヌ

私たちは人が見ていようが、知らずにいようが気にかけず
希望が微笑みながら示してくれる、慎ましい道を
楽しくゆっくりと歩いていきましょう

深い森の中のように、愛の中に取り残された
私たちの2つの心が、穏やかな優しさをあらわにすると
夕暮れに歌う、二羽の夜鳴き鶯のようでしょう

私たちはこの先、運命が何を遣わすのか心配せずに
手に手を取って、同じ歩調で歩いていきましょう
混じりけのない気持ちで愛し合う、無邪気な魂を持って
ねぇ、そうでしょう?

幸せを感じると、それが達成されない不幸、もしくはその崩壊を恐れてしまう癖のある詩人ヴェルレーヌさん。誰もが持っている、そんな自信のなさや弱さを見事に曲にしたフォーレさん。この二人の芸術への昇華は必聴です。

終曲は「冬は終わりに」。苦悩の冬は終わった、今の自分には、どの季節が巡ってきても、もう大丈夫だ、私の横には愛する人がいるのだから、という内容。超訳ですが(笑)。

日本にも再生の春が今、ようやくやってきました。まだまだそんな気分になれない東北のことを考えると胸が苦しいですが、希望を、常に未来に光を感じられるような素晴らしい国であってほしいと願い、祈るばかりです。音楽をするとは、そういうことだと感じる今日この頃です。


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by komaiyuriko | 2013-03-28 02:15 | 文化・芸術

今年の二月から六月にかけて、パリのオランジュリー美術館で評判になったエキスポジションがあります。《ドビュッシー、音楽と美術》です。人の口コミでだんだん人気が広がり、最終的には大盛況のうちに幕を閉じたという、伝説の美術展!

有難いことにこの美術展は今、東京におられるのです。東京駅の楽しい地下街から地上に上がってすぐのところにあります、ブリヂストン美術館で開催中。
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あまりの素敵さに、今回で二回目の拝観です。

前回は、美術品や解説を一言一句漏らさぬように徹底的に観ました。まるで凄腕刑事です。

そしてこの日はナント!
『ドビュッシーと同時代の芸術家たち』と題したレクチャーコンサートがピアニストの鶴園紫磯子先生によって開催されました。鶴園先生はピアニストでありながら音楽史、美術史研究の大家で、フランス近代、特にドビュッシーとその時代の音楽と、オリエンタリスム、ジャポニスムなどの権威です。

鶴園先生とは、以前ご一緒にコンサートをさせて頂いたことがあります。彼女が主宰するコンサートで、タイトルも一回目が「ベル・エポックの詩神たち〜ルイス、マラルメ、レニエの詩による音楽〜」、そして二度目が「エンマ・バルダックを巡って〜フォレとドビュッシーに愛されたサロンの妖花〜」です。フランス音楽を勉強したことのある方なら、このタイトルを見ただけで、鼻血が出るでしょう(天気予報風)。

そんな鶴園先生によるレクチャーコンサート。ワクワクドキドキしながら出かけました。

鶴園先生のお話は、学者先生の、本を読むようなお話ではありません。まるでその時代に生きて、見てきたかのような、新鮮な話ぶりが魅力です。聞き手の興味を誘い、作曲家や詩人が実際に生きていたことを感じさせる、実に生き生きとした楽しいお話なのです。今回もドビュッシー展でドビュッシーと芸術家たちの相関図ともいえる作品群や写真を見て、机上の勉強では感じることのできない実感と興奮を覚えました。

またドビュッシーの音楽の肝といえる部分を、他の芸術によって、例えばヴェルレーヌの詩によって、またはドニ、ルロール、北斎の絵によってご説明なさっとことは、私にとって青天の霹靂でした。印象派、象徴派の濃い霧が一瞬にして晴れるような理解が出来たことは衝撃でした。芸術を芸術によって説明する、鶴園先生の素晴らしさに感動致しました(涙)。
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モーリス・ドニの作品「聖行列の行進」
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同じくドニの「ミューズたち」。この絵に関する先生の解説、面白かったです。おぉ~!と感嘆のうめき声をあげることもしばしば。

マラルメの火曜会の件もなかなか愉快でした。
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こちらマネ作のマラルメさん。あまりにも有名ですね。

以前、ブログでお話した《フランス詩の会》では、ちょうどマラルメの回を重ねたところでした。“海の微風”、“エドガー・ポーの墓”、“純潔に、生気あふれ”、“ため息”、“虚しい願い”、“扇”、“あらわれ”、“牧神の午後”、そして仕上げに“エロディアード”を読み解いていきました。マラルメの好きなワードや、趣味などが分かってきた頃でした。マラルメの火曜会とは、どんな雰囲気だったのかしらん、と思いを馳せて遊んでいましたが、鶴園先生の話によると、マラルメばかりが話していたらしいです(笑)。つい、吹き出してしまいました。もちろん彼独自の芸術論を話していたのでしょうね。でもきっと、綺麗な小物の話でも夢中になって話していたんじゃないの?なんて考えただけで、笑えてしまいました。
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参考資料にマラルメ嬢の扇をご覧ください(笑)。ドビュッシーの「マラルメの3つの詩」には、この扇に書かれた「扇」が入っています。

ドビュッシー展では、ドビュッシーの出世作としてカンタータ『選ばれし乙女』を大きく取り上げていました。イギリスの詩人であり画家でもあるロセッティの詩による『選ばれし乙女』。
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ロセッティ作「選ばれし乙女」
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ピアノ&ヴォーカルスコアの表紙。ロセッティ作。

まだ本当に初期の作品ですが、「ペレアスとメリザンド」や、「聖セバスチャンの殉教」、または「牧神の午後への前奏曲」を思わせる断片が見られます。ドビュッシーの作品にしては分かり易く、ドラマティックで、全体の長さも20分程という、ドビュッシーのエキスが凝縮された作品です。

この作品を、我が“クルト・パイユ”が12月に旧奏楽堂で演奏致します!ドビュッシー生誕150周年記念コンサートです。
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ドビュッシー作曲
カンタータ『選ばれし乙女』(全曲)

選ばれし乙女:田中麻理
語り:相可佐代子
合唱:アトリエ・コラル東京

指揮:駒井ゆり子
ピアノ:岩撫智子

この作品を生で聴けるチャンスはないはずです。ちなみに上野の旧奏楽堂も、今年度いっぱいで閉鎖しますので、日本初のクラシックの殿堂でドビュッシーのレア作品を聴けるとは、これはちょっと事件ですよ!

さ、急いで手帳に要チェックです。

《ドビュッシー 音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで》ブリジストン美術館で10月14日まで開催中です。

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by komaiyuriko | 2012-09-04 21:02 | 文化・芸術

ウディ・アレンの映画がいつもツボです。「マンハッタン」は何度観た事やら。
真顔の討論で爆笑させるのは彼にのみできる神業です。そのウディ・アレンがアカデミー賞の脚本賞を受賞した作品、「ミッドナイト・イン・パリ」を鑑賞してきました。
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彼自身、アカデミー賞をとったからと言って「別に?」といったスタンスですが、コメントがまた面白い。
「アカデミー賞をとったのは良い驚きだったけど、自分の人生を変えることはないよ。現に今だって風邪ひいちゃってるしさ。」
ふふふ。笑えます。

この映画、大変ユーモアにあふれ、久しぶりに気持ちの良い映画を見た、という印象。映画終了後、なんだか拍手をしてしまった私。他にもパラパラ拍手が聞こえました。楽しくて悲しいことなんて少しもないのに、涙が出てしまう静かな感情の昂りってありますよね。この映画はまさにそんな感じ。

この映画によって、ベル・エポックのパリも、ルネサンスも、バロックも、ルイ王朝時代も、そして現在(いま)も、いつだって素晴らしい時代なのだと感じることができる精神の余裕と感受性の豊かさを常に持ち続けていないと損しちゃう!というアイディアを頂きました。

アホらしいほど洒落た映画です。この映画の脚本には正確さや精密さなんて全くありません。でも「そんなのどーでもいー!」と思わせる魔法がかかっているのだと思いました。
鑑賞後、恋をしているようなふわっとした感覚が続く素敵な映画。皆様もお時間がありましたら是非。渋谷Bunkamuraのル・シネマ他で上映中です。

あ~、やっぱりパリって魔法がかかっている街なんだな~。

同じくBunkamuraの地下にある美術館で「レオナルド・ダ・ヴィンチ~美の理想~」というエキスポジションをしていたのでフラリと立ち寄りました。
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鑑賞後、製作側のキャッチコピーのうまさについ唸り声をあげた私。
「ほつれ髪の女に初めて会える」です。素晴らしいキャッチ。まるで昔から会いたくて会いたくて、それでも会えるわけなくて、それが今日やっと叶う!的な。

ワクワクすることもあまりなく終了。アモナヴィー(私の意見)よ、アモナヴィー。一番興味深かったのは最後にある「レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯」という9分のヴィデオ。映っている風景やストーリーに全く関係ない音楽を挿入していると感じさせることが続き、それがものすごく驚きました。例えばフィレンツェの景色とウィンナーワルツの組み合わせのような。感覚で選曲といった大胆さ。

ウディ・アレンの「それについては言及したら野暮!これはユーモアなんだから。」といった非常に洒落た目隠しと、そのヴィデオの「え、なんで今それ流しちゃうの?」というフィット感の無さは、後者に意図があったとしてもその効果は雲泥の差だなと思いました。

ゴッホ終焉の地、オーベル・シュル・オワーズにあるゴッホが最期を迎えた宿屋で見るヴィデオの素晴らしさ(ゴッホがテオに宛てた手紙の映像とシュトラウスの「Beim schlafen gehen」や「Morgen!」の挿入)を思い出しながら、渋谷の雑踏を歩きました。

そして、デ・ゼッサントのように昼夜逆転の生活をしているこの私がナント、これまた渋谷の映画館へモーニングショーを観に行って参りました。「メゾン~ある娼館の記憶~」というフランス映画です。
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朝から重かった~~(泣)。19世紀後半から20世紀初頭までのフランス風俗文化の現実をまざまざと見せつけられた感じです。当時の男女の人権についてというより、人間としての尊厳について深く考えさせられる映画でした。

ちなみに、日本版のチラシには「観る者全てを虜にする、極上の官能の世界」と書いてあります。これはいかがなものでしょうね。「官能」の裏を描いた映画ですから、印象として「官能」はありませんでした。アモナヴィーよ、アモナヴィー。もっと深い映画だし、もっと傷つけられる映画だと思います。そこに真実がある、といったような。いつだって「真実」を見るには恐怖が伴うものです。時代の流れと共に変容して生きていかざるを得ない女性の儚さや悲惨な運命のようなものを眼前につきつけられるような映画です。
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上流階級(モンド)と高級娼婦(ドゥミ・モンド)の世界、それは当時花開いていた美しい世界の裏側で、確実にあった人間のはきだめ、人間の想像力の限りを尽くした毒の花咲く世界だったのではないかと思います。

「吉原炎上」を見た時の感覚と全く同じ印象。
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五社秀雄監督の名作。

華やかで眩しいほどに美しい世界と人間の欲望渦巻く暗黒の世界は表裏一体。西も東も変わらないのだと思いました。そして犠牲になるのは女性ばかり。時代のせいにしてしまえばよいのでしょうかねぇ。まったく何なんでしょう。

映画は全体的に美しい映像に溢れています。こんなマネの絵のような場面も。
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精神的に傷つけられ、鬱々とした気分になるけれど、見なければいけなかった映画だったと思います。建築や内装やコスチュームや装飾品のスタイルなども相当勉強になります。ヨーロッパ風俗文化の歴史を学ぶ映画としてはオススメです。

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by komaiyuriko | 2012-06-17 01:01 | 文化・芸術

いつもお世話になっている、我がホームグラウンド(勝手に)のパルテノン多摩が25周年を迎えました!
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芸術文化事業にとって難しい時代となった昨今にあって、オリジナリティ溢れる企画でユニークな存在となっているパルテノン多摩。新しいホールだと思っていましたがもう25歳なんですねー。

私が高校生の頃、テレビドラマでオーケストラのシーンがあり、そこで撮影に使われていたのがパルテノン多摩でした。ステージの綺麗さと、外観と風景のあの調和は圧巻でした。

いつか行ってみたいと高校生の私は憧れに似た気持ちで思ったものです。いつか歌ってみたいなどという希望は毛頭思いつかない頃の話です。

それがご縁あって何度となくあの建物のあのステージで歌わせて頂けるようになるなんて!

世の中の巡り合わせには感謝するしかありません。

今後も地域と共に発展する素晴らしいホールとして繁栄していかれることを心からお祈り申し上げます。

パルテノン多摩25周年記念冊子に寄稿させて頂いた記事が掲載されました。錚々たるメンバーの中でお恥ずかしい位ですが、愛の大きさは負けません(笑)。
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Bon Anniversaire Parthenon Tama!

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by komaiyuriko | 2012-05-07 01:46 | 文化・芸術

春の息吹を感じる今日この頃。
こんな日は、いつものメンバーでいつものレストランに行くに限ります。
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江古田にあるイスラエル料理屋さん『シャマイム』です。
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写真のお料理は、ファラフェル&ピタパン、サラダ各種、ひよこ豆のムース、スパイス、ラム肉、チキン、チキンカツなど。

パリ時代夢中になったイスラエル料理ですが、日本のおうちの近くにこんなに美味しく、こんなに安く、そしてオーナーさんがこんなに親切なお店があるなんて、アタシャ幸せだよ。ビバ、シャマイム。

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今日もアルコールを飲まない4人で、ミントティ片手におよそ開店から閉店まで歓談しました。笑いすぎて、そして食べ過ぎてお腹痛い(笑)。お店はいつも満員。行こうと思ったらご予約をお忘れなく。

素晴らしき哉、人生。

また別の日。
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東京スカイツリーのお膝元、江戸東京博物館へ『ザ・タワー展』を観に行きました。これはかなり前から楽しみにしていたエキスポジション!東京スカイツリーの開業もそろそろですものね。
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ちなみにこの江戸東京博物館は、常設展も充実していて楽しめるのがポイント。常設展というよりアミューズメントパークといってもいいほど。外国人にはオススメです。お子様にはあまり向かないかも。
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それにしても贅沢な空間利用をした建築ですよね。

その後は『ザ・タワー展』に敬意を表して、東京タワーをレインボーブリッジと共に眺めようと、お台場に行きました。ここにはパリのお店『メゾン・ド・ミエル』を取り扱っているハチミツ屋さんもあるので、キャンディも買いに行きがてら。

私、お台場初体験なんです(告白)。ゆりかもめも初体験。
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乗り物という乗り物が苦手な私には恐怖の乗り物でしたが、娯楽性は認めます。レインボーブリッジに入るためのターンやブリッジ添いに進むところなんてすっごいもん!

お台場では、私の大好きなキャラクター、チェブラーシュカが売っているロシア料理のピロシキを食べたり、
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パリへの郷愁からクレープを食べたり、
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新大陸への憧れからアメリカンレストランに行ったりと、
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胃が大忙しの一日でした。食文化を知ってこそ、その国への理解が深まります。
これからもどんどん世界を食べて行きたいと思います。

タワー展にちなんで、新旧二つのタワーをハシゴ観覧した楽しい一日でした。
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素晴らしき哉、人生。

追伸
「メゾン・ド・ミエル」のハチミツキャンディ、私のオススメはこちらの松ヤニ入り。
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サービスショット 
江戸東京博物館のある両国駅にて
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by komaiyuriko | 2012-03-31 02:03 | 文化・芸術

記録的な大雪の東京、今日はピアニストの岩撫さんと寄席に行って参りました。
何もこの日に行かなくたって、という吹雪の中を、2人で喜びに胸を膨らませながら上野の広小路亭へと向かいました。
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―なんで寄席に行ったのかって?おいおい、お前さん、いい質問だね。
はっつぁん、実はね、今日のこの寄席にはね、アタシの高校、大学、大学院の同級生、ピアノ科の当時そりゃ~優秀で有名だったあの“のだゆき”ちゃんが出てるっていうじゃないか。
―くまさん、そりゃあホントかい?
―はっつぁん、ホントだよ、アタシャ、それを今日この目で見てきたんだからね。

ってわけだったんですよ。

付属高校から院まで一緒だったなんてよく考えたら一番長く同級生をしていたのですねぇ、私。その彼女が、ピアニスト活動の傍ら、いつの間にか芸人になって各地の寄席に出演しているのです。ビックリでしょ。でも驚きませんでした。うん、彼女ならやるなって感じ。ピアノ科ではピカイチの腕前なのに、なぜか聴音和声のクラスでは私といつも一緒のDクラス(AからEまで成績順。もちろんAが優秀。)。聴音旋律のクラスでは私といつも一緒のDクラス(デジャヴュ?!)。ヘンテコでグロテスクな下敷きを使っていたのが忘れられません。

のだちゃんはのだちゃんで、私のことをこのように回想します。
まだ中学生だった頃、付属の講習会に来ていた私のことを、
「あの子、モテてるな~。女の子に囲まれて、モテモテじゃない!」
と思っていたそう。入学式の時に私を見つけて、
「あれ、あのモテ男、スカートはいてる!」
と思ったんですって。
へこ~~~ですよ!
全く、人って何を思われているかわかりませんね。今日初めて知ったわ。

そんなのだちゃんの舞台を岩撫さんと2人、ドキドキしながら観に行ったのです。
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あ、岩撫さんは大学時代、のだちゃんと同級生。ちなみに2人はピアノ演奏家コースといって超難関を潜り抜けた猛者たちしか入れないそのコースでの同期です。すごいんだから!突如虎の威を狩るユリコ。

寄席での作法を知らない我らは、初回の今日はちょっとお行儀が良すぎたかも。
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本当は食べたり飲んだりしながら観ていいんですって。通は始まる前や前座の時にお弁当を食べて、あとは、静かに飲みながら観るらしいですよ。

のだちゃんの舞台の前には前座と呼ばれる若い講談師さん、二つ目と呼ばれる落語家さんなどが続きます。そしてついに色ものと呼ばれる「音楽漫談」ののだちゃんの登場です。

「待ってました!」

と掛け声をかければよかった(悔恨第1弾)!次回はやるぞ!

彼女のネタは面白く、会場も相当盛り上がっていました。私も大いに笑い、普通の声でつっこんだりしちゃったくらい。だってバカバカしいんだもん(笑)!

音楽漫談というくらいですから、音楽を使ったネタです。彼女はピアニカとリコーダーを使った漫談です。その演奏がうますぎるの。さすがピアノ演奏家コース出身。うますぎて聞き入っちゃいました。演奏が終わるや否や

「ブラーヴァ!」

と自然に声をかけた私。うん、これなら絶妙なタイミングで言えるな、ニヤリ。

彼女の雄姿をカメラに収めたかったけれど、そんなことしちゃいけないんだろうと我慢していました。
本当はいいみたい。くっそ~~。悔恨第2弾。

彼女のあとも講談や落語が続き、仲入り(休憩)となります。私たちはのだちゃんとお茶に行く約束をしていたのでそそくさと表へ出ました。番頭さんのような受付のおじさまには

「お早いお帰りで!」

と言われてしまいました。ずっといるものなかしらね、本来は。でも全部観覧したとすると4時間くらいかかりそうです。ワーグナーかっつーの。でも一人一人の芸人さんの味の違いや、話芸に感心しきりでしたので、きっとあっという間でしょうね。

寄席を出るころには雪が雨に変わっていました。
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寄席の入り口で記念撮影。

その後、久しぶりにあった同級生とのお茶会は、夢中でしゃべり続けるマシンガントークの場と化したのでありました。
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だって聞きたいことがいっぱいあったんだもん。寄席での出演順とか、楽屋割りとか、講談落語の世界とか、色ものの世界とか、師匠と弟子の関係とか、ギャラとか(笑)。。。
何もかもが新鮮で、質問攻めにあわせちゃった!

閏年の記念すべき大雪の今日、私の夢がまた一つ増えました。
それは、次回からは一番前の桟敷席にだらりと座り、開演前にお弁当を食べ、お気に入りの芸人さんたちが登場するや、「待ってました!」などの掛け声をかける寄席通になることです。

最近の私のドリームリスト、溜まってきたな、ふふふ。

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by komaiyuriko | 2012-03-01 01:31 | 文化・芸術

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お馴染みのアクセサリーデザイナーの加山君が、東京国立近代美術館で開催されている《ジャクソン・ポロック展》の栄誉ある公式サポーターとなったので、その恩恵を受けてオープニング前のイベントに招待頂き、行って参りました~!

加山君の活躍は目を見張るものがあります。昔からの友人としては鼻高々でいい気分です(笑)。
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有名人だらけと言ってもいい、華やかなパーティでした。そして開催前にしっかりと展示を見せて頂きました。

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ドラマティックな人生を歩んだポロックさん。それだけでも映画が撮れそう。ま、それは置いておいて。
画家の作品とは、時代時代によって大きく変わりますが、彼も然り。画風にものすごい変遷があります。私はやはり代表作品群が好きです。
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エネルギッシュ!
という印象。バランスいいよね(笑)。すごい上から目線。

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後期の作品も好きだなと感じました。まるで書のような作品もありました。友人の書家さんの作品を思い出したくらい。発信の仕方は違うけれどスタイルと印象が似ていると感じ、創造型アーティストへの尊敬と称賛の気持ちを改めて感じました。

5月6日まで開催中。今回はミュージアムショップも充実しています。
もちろん加山君の作品もありますのでお見逃しなく。

さて、パーティもそこそこに皆でご飯にいくことに。セレブっぽくタクシーで移動。
こういうことは雰囲気が大切なのだ!

向かった先はトニーローマです。
リブが美味しいお店なのだそう。パリでいうレストラン“クルト・パイユ”ですね。
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注文した料理は肉!だってお肉屋さんだもん。
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どやっ。
そしたらトルティーヤも山盛りでついてきた。。。
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半分も食べられない、見かけ倒しの私なのでありました。
一気にたくさんの量を見せられちゃうと無理なの(。-_-。)
わんこ形式なら自信あり。←要らぬ情報。

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この人たちといると刺激的なのに落ち着きます。相反するものなのに同時にある、不思議で大切な仲間です。群青の夜空の下、友だちから伝わる温度と吐く息白い外気に、歌人なら素晴らしい歌でも読めたでしょうに、と思った夜でした。

ジャクソン・ポロック展、必見です!

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by komaiyuriko | 2012-02-27 00:49 | 文化・芸術

月に一度、「フランス詩のサロン」という素敵なトコロに行き、ちゃっかりと、そして安易に知識を頂いてきております。そこでは毎回、興味深い詩を読むことになります。

私のような素人は、フランス歌曲に関係のある詩とその周辺を勉強しているのですが、この会では、「詩として面白い詩」を読むことになります。時代や詩人の人生の背景、詩法、そして詩に出てくる語句や慣用句など(フランス語も日本語も!)もいっぺんに教わることのできるお得感満載のサロンです。一応年代に沿って進み、もう1年近く経ちましたので、最近はボードレールさんを読んでいます。

ボードレールと言えば、ダンディズムですが、『悪の華』に入ってから、それが冴えわたっています。神への冒涜さえも大変ダンディーです。ここではご紹介しません(できません)が、「聖ペテロの否認」の最後なんかアッパレです。クリスティアンの方は読むことをお勧めしません。バッハの「マタイ受難曲」でのそのシーンは、エヴァンゲリストが初めて、そして全曲を通してたった一度だけメリスマを用いて、心の昂りを歌うシーンとしても有名です。その後の慰めと許しに満ちたアルトのアリアでは涙を流さずにはいられません。ですが!ボードレールさんの「聖ペテロの否認」、スゴイです。良いも悪いもないですが、とにかくスゴイです。

今日はそんな問題作ではなく、「悪の華」の中で一番有名といっても良い、面白い詩をご紹介。「信天翁」という詩です。もちろん漢字、読めませんでしたけどね(焦)。おきのたゆう、おきのたいふ、あほうどり、と読みます。
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アホウドリは白い大きな翼で素晴らしい飛翔力を持つ雄大な鳥。しかし地上ではその大きな翼が徒となり、ヨチヨチとしか歩けない鳥なのだそう。しかも飛ぶためには十分な助走をしなければ飛び立てないんですって。危険が来たからといってパッと逃げられず、その上、人間への警戒心のない心優しい(かどうかは知らないが)鳥で、いとも簡単に捕まえられることから「アホウドリ」なんて呼ばれてしまっているようです。うふふ。カワイイ。

海の男たちには、釣り針でひっかけて徒に捕獲し、飛んでいる時の格好良さとのギャップ、つまり甲板での不格好さを笑いの種にするという、わる~いお遊びがあるらしい。サロンで聴いた話によると、アホウドリは大変繊細な鳥で、捕まえられるとその恐怖から「オェッ!」となってしまうらしい。きゃわいそう~!
アホウドリを侮辱するような悪い遊びはすぐにやめなさい、水夫たち(笑)!あ、笑っちゃった。
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この「信天翁」という詩は、詩人もまた同じように、詩作や文学、知識と美意識と哲学の森においては英雄であることは間違いないが、世間という甲板に捕まえられたらまるでアホウドリと同じだ、というなかなか皮肉でニヒルな詩となっています。「詩人は選ばれし者」という意識もありますね。ヴェルレーヌはよくつぶやいています(笑)。「選ばれし者の不幸」と。詩人とはそういうものです。

さ、ではアルバトロス、いってみよー!

L'Albatros

— Charles Baudelaire

Souvent, pour s'amuser, les hommes d'équipage
Prennent des albatros, vastes oiseaux des mers,
Qui suivent, indolents compagnons de voyage,
Le navire glissant sur les gouffres amers.

À peine les ont-ils déposés sur les planches,
Que ces rois de l'azur, maladroits et honteux,
Laissent piteusement leurs grandes ailes blanches
Comme des avirons traîner à côté d'eux.

Ce voyageur ailé, comme il est gauche et veule!
Lui, naguère si beau, qu'il est comique et laid!
L'un agace son bec avec un brûle-gueule,
L'autre mime, en boitant, l'infirme qui volait!

Le Poète est semblable au prince des nuées
Qui hante la tempête et se rit de l'archer;
Exilé sur le sol au milieu des huées,
Ses ailes de géant l'empêchent de marcher.

ABABの交韻、6,6の12音節から成り立つアレキサンドランのかなり基本的な詩の形でした。

それでは上田敏さまの名訳でご紹介します。

信天翁

波路遙けき徒然の慰草と船人は、
八重の潮路の海鳥の沖の太夫を生擒りぬ、
楫の枕のよき友よ心閑けき飛鳥かな、
沖津潮騒すべりゆく舷近くむれ集ふ。

たゞ甲板に据ゑぬればげにや笑止の極なる。
この青雲の帝王も、足どりふらゝ、拙くも、
あはれ、眞白き双翼は、たゞ徒らに廣ごりて、
今は身の仇、益も無き二つの櫂と曳きぬらむ。

天飛ぶ鳥も、降りては、やつれ醜き痩姿、
昨日の羽根のたかぶりも、今はた鈍に痛はしく、
煙管に嘴をつゝかれて、心無には嘲けられ、
しどろの足を摸ねされて、飛行の空に憧るゝ。

雲居の君のこのさまよ、世の歌人に似たらずや、
暴風雨を笑ひ、風凌ぎ獵男(さつお)の弓をあざみしも、
地の下界にやらはれて、勢子の叫に煩へば、
太しき双の羽根さへも起居妨ぐ足まとひ。


素敵過ぎて、良く分らなかったかも?
敏さまより分りやすい、鈴木信太郎訳もつけておきますね(笑)。


信天翁

慰みに、船乗りたちは、時折 巨大な
海鳥の 信天翁を 生擒りにする。
航海の これは 呑気な道連れで、しおからい
海を渡って滑って行く船の後から 従(つ)いて来る。

船乗りたちが 甲板にこれを据えると、忽ちに
蒼空の王者も とかく不器用で 恥ずかしそうに、
真白な大きな翼を 櫂のように
その両脇に 憫れにも 曳摺っている。

翼あるこの旅人の なんとぶざまな意気地なさ。
今まで美しかったのに、滑稽極まる醜い姿。
短い烟管(きせる)で 嘴を 一人の水夫は 突っ突くし、
天翔(あまがけ)る身の成れの果の跛(びっこ)を 真似するものもいる。

この雲霄(うんしょう)の王侯に 詩人は似ている。
暴風雨(あらし)の中を往来し 射手を嗤ってはいるが、
地上の嘲罵のただ中に 追放(おいや)られると
巨人の翼は 歩くのを 邪魔するだけだ。


今週のプロパガンダは
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「アホウドリをバカにするなー!」
でいきましょ。

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by komaiyuriko | 2012-02-16 18:41 | 文化・芸術

昨日は雪が降り、そのことが嬉しくて、足元に積もった雪を踏んでは心が温まった夜でした。

お雛祭りのその日に、私が以前から自分のためにやらなければならない上に心底憧れていたフォレ&ヴェルレーヌの『優しき歌』(全曲)を歌うコンサートがあります。そこではもう一つ、ドビュッシーの『マラルメの3つの詩』(全曲)も歌います。私の愛するラヴェルにも同じく『マラルメの3つの詩』があるのですが、そのうち2つの詩はドビュッシーと共通です。ラヴェルの作品の方は以前コンサートで歌わせて頂いたこともあります。学生時代から熱烈に恋した曲でもありました。それなのに私のフランスの師匠、マダム・セリグったらこの曲にあまり興味がない感じ。きっとそれはドビュッシーと比べてしまうからだと勝手に推察しています。
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ちなみにフランス歌曲には同じ詩に何人もの作曲家が曲をつけ、どれも名曲となっているものがたくさんあります。それだけその詩には、作曲家のインスピレーションを喚起させる凄みや美しさというものがあるのだと思います。ヴェルレーヌの「グリーン」、「月の光」、「マンドリン」、「牢獄」、「巷に雨が降るごとく」、「そはやるせなき恍惚の」、ボードレールの「旅への誘い」、レニエの「雨に濡れる庭」、「秋の夜」などなど。パッと思い浮かんでもこれだけあります。まだまだ沢山あるでしょうね、ゴーティエ、ユゴー等。

例えばフォレとドビュッシーがかぶっている詩というのはたくさんあります。どちらの作品も良くてこんなに感じ方が違うのに「どちらも素晴らしくて選べない!(別に選ぶ必要はないんだけどね。)」なんて、苦悶の声を上げることもしばしば。

それがこの「マラルメの3つの詩」に関しては、ドビュッシーに決まりだね、的なご意見ばかり小耳に挟むではないですか!私の心は大変痛みました。O triste,triste mon âmeですよ。(全然関係ないけどヴェルレーヌより)

この場合では、すでに在る優れた詩が、ドビュッシーさんという魂(媒体)とラヴェルさんという魂(媒体)を通り抜けて曲となって出てきたわけです。当然、全く違う作品が出来上がりますよね。あとは趣味の問題です。自分の趣味に合った方が好きだし、また逆にもう一方の解釈の違いに驚いて感嘆し、そちらに心を寄せてみたり(笑)。ですからドビュッシーの方がいいという単一的な見解ばかり聞かれると、ラヴェル命のタトゥーを心に刻んでいる私にはちょっと不服なのであります。

「グリーン」なんかですと、若い頃の私はフォレの方が好き。早朝の全てが生まれ変わったフレッシュさと、若者の純粋な恋心が持つフレッシュさが相俟って最高だと思っていました。でもドビュッシーの方が官能的で好きになり、今では本当にどちらかなんて選べない究極の2曲です。「そはやるせなき恍惚の」はドビュッシーの方が断然好き。「マンドリン」は100%フォレ。アーンはあんまり~。デュポンのもなかなか素敵で私は好きですねー。こんな感じで自分が詩を読んだ時の感覚に合った曲の方が好きとなります。

なのにラヴェルの「マラルメ」には称賛の声があんまり聞こえないじゃないの!!
私は100対0でラヴェルです。ラヴェル最高。100万点です。譜読み中の私はドビュッシーの「マラルメ」をさらいながら「ドビュッシーったら一体どういうつもり?!」と、心の中で軽く30回は言いました。譜読みが難しすぎて「ドビュッシー、あったまきた!」と悪口を言ったりもしました。

今日、ピアニストさんとの合わせでドビュッシーの「マラルメ」が大分体に入りました。
「あれ、なんかいいな。。。」
と最近図らずも感じている私でしたが、今日はっきりと、
「これはヤバイ、素晴らしい。」
と気付きました。

特に2曲目のラヴェルと共通の詩、「空しい願い」に関しては、以前マダム・セリグが言っていた「この曲はFête galanteだから。」の意味がピカーーーンと分りました。

それを言われた時はラヴェルの「マラルメ」のレッスン中でした。私の反応は「ふ~ん」という程度。よくよく考えても、「ふ~ん、そうなんだ」でした。それが今日、さっきですよ、さっき。「Fête galanteってこういうことか!!」とまさに頭の中で電球が点灯しました。

すると曲が余りにもクリアに見えて、色合い豊かに洒落豊かに感じられ、歌い方も180度反対側となりました。Fête galanteを全身で感じつつ歌うと今までとは全く別の曲になるではありませんか!うん、もう確実に別の曲です。

難解な曲を勉強していて、「分かった!」と思った時、やっと目が見え始めます。混沌とした暗闇に一筋の光が射す感じ。その「分かった!」を得てからがスタートです。さっき、ようやくこの「分かった!」を迎えました。おめでとう。ありがとう。

結論ですが、ラヴェルの「空しい願い」は素晴らしいということ。結局ね。そちらにはもっともっと得体の知れないイマジネーションと不気味さ、セピア色の美しい風景とねじれた思惑や恋心や嫉妬心、そして純粋さがあります。中世などの古い時代のきな臭さを感じます。そしてドビュッシーの方は完全にFête galanteで彩られていて、これまた素晴らしい作品であるということ!ユーモアといったら言い過ぎかもしれませんが、ラヴェルのような深刻さはないと見ました。もっと美しさや優雅さに長けていてその上澄みのような感じ。中世っぽい雰囲気はリズムや音階、和声でガンガンに醸し出してはいるものの、とても現代的(ちょっと言葉が見つからない)、プルースト的(これ正解)な感じがしました。
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(画像が悪いですが、左がドビュッシーで右がラヴェル)

ごめんね、ドビュッシー。悪口言ったりして。
「ドビュッシーの音程のせいで歯が痛い(怒)。」なんてもう言わないね。

この勝負、引き分け。

あ~、楽しかった。この楽しさ、この熱の出るような法悦。
「これがフランス歌曲の醍醐味じゃーーーーー!!」という気持ちで、雪の凍結した道を、熱を発散させながら自転車をぶっとばす私なのでありました。

最後に私の「一人相撲日記」を読んで下さった方へ、感謝の気持ちを込めてマラルメの「空しい願い」をプレゼントします。


無益な願い(加藤美雄訳)

王女よ、あなたの唇が触れて、この茶碗に
うかび出るヘベーの運命に嫉妬した私は、
情炎に燃えながらも、聖職者の慎むべき身ゆめに
セーヴル焼に裸身をあらわさないのです。

私は、あなたの髭を生やしたむく犬ではないのですし
香料入りのボンボン、口紅、しゃれた将棋の駒でもないが、
私の上に注がれたあなたの閉じた伏眼をしっている。
金髪の神業のような編み手こそ、金銀細工の名手です。

わたしたちを名づけて下さい……木苺の香に豊かな微笑が
見さかいもなく誓いを喰み、妄想に鳴く
手馴れた仔羊の群と一体となる、あなた。

わたしたちを名づけて下さい……扇の翼持つ愛神(アムール)が
笛を手に、この羊小屋を眠らせる私を描くために。
王女よ、あなたの微笑みの番人と、わたしたちを呼んで下さい。


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