ドビュッシー、音楽と美術

今年の二月から六月にかけて、パリのオランジュリー美術館で評判になったエキスポジションがあります。《ドビュッシー、音楽と美術》です。人の口コミでだんだん人気が広がり、最終的には大盛況のうちに幕を閉じたという、伝説の美術展!

有難いことにこの美術展は今、東京におられるのです。東京駅の楽しい地下街から地上に上がってすぐのところにあります、ブリヂストン美術館で開催中。
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あまりの素敵さに、今回で二回目の拝観です。

前回は、美術品や解説を一言一句漏らさぬように徹底的に観ました。まるで凄腕刑事です。

そしてこの日はナント!
『ドビュッシーと同時代の芸術家たち』と題したレクチャーコンサートがピアニストの鶴園紫磯子先生によって開催されました。鶴園先生はピアニストでありながら音楽史、美術史研究の大家で、フランス近代、特にドビュッシーとその時代の音楽と、オリエンタリスム、ジャポニスムなどの権威です。

鶴園先生とは、以前ご一緒にコンサートをさせて頂いたことがあります。彼女が主宰するコンサートで、タイトルも一回目が「ベル・エポックの詩神たち〜ルイス、マラルメ、レニエの詩による音楽〜」、そして二度目が「エンマ・バルダックを巡って〜フォレとドビュッシーに愛されたサロンの妖花〜」です。フランス音楽を勉強したことのある方なら、このタイトルを見ただけで、鼻血が出るでしょう(天気予報風)。

そんな鶴園先生によるレクチャーコンサート。ワクワクドキドキしながら出かけました。

鶴園先生のお話は、学者先生の、本を読むようなお話ではありません。まるでその時代に生きて、見てきたかのような、新鮮な話ぶりが魅力です。聞き手の興味を誘い、作曲家や詩人が実際に生きていたことを感じさせる、実に生き生きとした楽しいお話なのです。今回もドビュッシー展でドビュッシーと芸術家たちの相関図ともいえる作品群や写真を見て、机上の勉強では感じることのできない実感と興奮を覚えました。

またドビュッシーの音楽の肝といえる部分を、他の芸術によって、例えばヴェルレーヌの詩によって、またはドニ、ルロール、北斎の絵によってご説明なさっとことは、私にとって青天の霹靂でした。印象派、象徴派の濃い霧が一瞬にして晴れるような理解が出来たことは衝撃でした。芸術を芸術によって説明する、鶴園先生の素晴らしさに感動致しました(涙)。
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モーリス・ドニの作品「聖行列の行進」
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同じくドニの「ミューズたち」。この絵に関する先生の解説、面白かったです。おぉ~!と感嘆のうめき声をあげることもしばしば。

マラルメの火曜会の件もなかなか愉快でした。
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こちらマネ作のマラルメさん。あまりにも有名ですね。

以前、ブログでお話した《フランス詩の会》では、ちょうどマラルメの回を重ねたところでした。“海の微風”、“エドガー・ポーの墓”、“純潔に、生気あふれ”、“ため息”、“虚しい願い”、“扇”、“あらわれ”、“牧神の午後”、そして仕上げに“エロディアード”を読み解いていきました。マラルメの好きなワードや、趣味などが分かってきた頃でした。マラルメの火曜会とは、どんな雰囲気だったのかしらん、と思いを馳せて遊んでいましたが、鶴園先生の話によると、マラルメばかりが話していたらしいです(笑)。つい、吹き出してしまいました。もちろん彼独自の芸術論を話していたのでしょうね。でもきっと、綺麗な小物の話でも夢中になって話していたんじゃないの?なんて考えただけで、笑えてしまいました。
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参考資料にマラルメ嬢の扇をご覧ください(笑)。ドビュッシーの「マラルメの3つの詩」には、この扇に書かれた「扇」が入っています。

ドビュッシー展では、ドビュッシーの出世作としてカンタータ『選ばれし乙女』を大きく取り上げていました。イギリスの詩人であり画家でもあるロセッティの詩による『選ばれし乙女』。
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ロセッティ作「選ばれし乙女」
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ピアノ&ヴォーカルスコアの表紙。ロセッティ作。

まだ本当に初期の作品ですが、「ペレアスとメリザンド」や、「聖セバスチャンの殉教」、または「牧神の午後への前奏曲」を思わせる断片が見られます。ドビュッシーの作品にしては分かり易く、ドラマティックで、全体の長さも20分程という、ドビュッシーのエキスが凝縮された作品です。

この作品を、我が“クルト・パイユ”が12月に旧奏楽堂で演奏致します!ドビュッシー生誕150周年記念コンサートです。
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ドビュッシー作曲
カンタータ『選ばれし乙女』(全曲)

選ばれし乙女:田中麻理
語り:相可佐代子
合唱:アトリエ・コラル東京

指揮:駒井ゆり子
ピアノ:岩撫智子

この作品を生で聴けるチャンスはないはずです。ちなみに上野の旧奏楽堂も、今年度いっぱいで閉鎖しますので、日本初のクラシックの殿堂でドビュッシーのレア作品を聴けるとは、これはちょっと事件ですよ!

さ、急いで手帳に要チェックです。

《ドビュッシー 音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで》ブリジストン美術館で10月14日まで開催中です。

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           クルト・パイユホームページ リニューアルオープン! 
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by komaiyuriko | 2012-09-04 21:02 | 文化・芸術